世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話
卒業アルバム

 部屋の整理をしていて見つけた高校の卒業アルバム。

 思わず開いてみると、明るい昼の日差しに照らされた緑の木々、青く澄んだ空、そして古めかしくも重厚な校舎が目に飛び込んできた。

 ページをめくると懐かしい顔が幾人か見つかる。

「あ。カジ先生だ。元気かなぁ?」

 卒業して5年? 6年?
 高等部と大学は最寄りの駅が違ったから、卒業以来会っていない。

「黄菜子ちゃん! 元気かなぁ?」

 懐かしい顔を見て出てくるのは、こんな言葉ばかり。
 だけど面倒くさがりで、人にあまり興味のなかった私は、卒業後も連絡を取り合うような友人は数名しかいなかった。大体、それ以前に、中高6年間、下手すると大学まで入れて10年間一緒に通った子もいるのに、名前と顔が一致するのは両手の指の数に満たなかった。
 中高一緒だった子のほとんどは大学も同じだったけど、大学生になると決まったクラスもなければ、人数も数倍に増えるから、過去覚えられなかった子は、やっぱり覚えられないままで……。

 そんな、あの頃の自分を思い出して苦笑する。
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