世間知らずな彼女とヤキモチ焼きの元上司のお話
新たなる一歩

 そして、早春の気持ちよく晴れたある日。

 デートの時はラフな服装の彼。会社ではピシッとスーツを着こなし、クールビズでもネクタイをきっちり締める彼。
 今日は、華やかな正装。
 やっぱり素敵。背が高くてハンサムで、厳しいけど優しくって。そして、私の前ではまるで子どもみたいな彼。
 そんな事を思っていると、彼はじっと私の目を見つめてきた。

「ねえ、さくら」

「なあに?」

「なんで昔の彼と別れたの?」

「え? ……なんて言った?」

 私が目を丸くすると、彼はしまったと言うように頭をかいた。

「この前から、一体何を気にしてるのよ、修一くんてば」

 私、そんなに変な態度取ってたかしらって、違う意味で心配になって来て、思わず聞き返す。
 だって、彼は私の元カレを気にするけど、私は彼の元カノなんて、申し訳ないけど、まったく気にならない。
 何しろ彼は今現在、私一筋だし、そもそも、私はあまり人に興味がない。昔ほど無関心ではないけど、誰かの過去を詮索して、言っても戻らない時間を追いかけようなんて思いもしない。
 何より、当然私は彼一筋だ。それが伝わっていないのなら、そっちの方が大問題な気がする。

< 20 / 23 >

この作品をシェア

pagetop