Caught by …
消えた彼


 くすんだ空模様を窓から見上げて、憂鬱になるのはこの頃の習慣。

「……セシーリア…セシーリア!」

 だから、知らず知らず上の空になってしまう。隣にいる友人のベッテの呼びかけに気づいて顔を上げると、呆れた表情があった。

「もーぅ…どうしたの?とっくに授業、終わってるわよ」

「あ…うん、ごめん」

 ベッテの言った通り、教壇に教師の姿はなく、残っているのも私達だけだった。

 笑顔を向ける私に軽くため息を吐いて、ベッテは自慢のロングヘアーを指でいじる。その腕には高級ブランドの時計が、明るい照明に輝いていた。

「そんなことより、覚えてる?明日の約束」

「約束…?」

 そんなの、したかしら。

 首を傾げる私に、苛立っているように眉間に皺を寄せるベッテ。彼女はとても短気で、思い出そうとする私の様子を、怖い顔で見ていた。

「アンネと私達三人で遊びに行く、ていう約束!…まったく、忘れっぽいんだから」

 腕を組んで私を見下ろすベッテに、私はまた笑顔を浮かべて謝る。そして、これ以上怒らせないために急いで帰る支度をして立ち上がる。

 教室から出ようとした私に、ベッテは…

「セシーリア…何かあったの?いつにも増してぼんやりしてる気がするんだけど」

「……なんにも。大丈夫よ!」
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