Caught by …
惑わせる彼


 頭が痛いのか、目が痛いのか、それとも喉が痛いのか…。いや、もしかしたら全部痛いのかも。とにかく酷い状態で目が覚めた。

 ベッドの上で身動ぎして仰向けになり、目を開けて見慣れた天井を睨む。それから目だけで壁にかけられた時計を睨む。

 もうじきに11時という時刻。私はひとつため息をして、起き上がった。

 頭を抱えて、また目を閉じ、しばらく方針状態のまま動かない。だけど、体に違和感を感じ、目を開けて自分の成りを確かめて、急いで布団の中に舞い戻った。

 どうして、裸…?

 その疑問から一気に昨日の出来事を思い出して、辺りを見渡してみた。しかし、誰の姿も気配もない。私しかこの部屋にいないのは確からしい。

「なんだか、ほんとに夢を見ていたみたい」

 昨日の彼の熱い体温と触れ合った感触を思い出すだけで、全身に火がついたように火照る。けど、それさえ私の妄想がうみだしたものじゃないかと思うと悲しくなる。

 寝返りを打って、彼が居たであろうスペースに手を伸ばしてみる。

 驚いたことに、そこにはわずかな温もりが残っていて、私は飛び上がって布団を体に巻き付けた格好悪い姿で出窓に張り付くと表の道に彼を探した。

「って、いるはずがないわ……バカね、私ったら」

 私はまたベッドへ戻って、端に腰かけた。

 でも、彼の温もりが残っていたということは、少し前まで彼が私の隣にいてくれたということだ。ただそれだけでも、私の頬が緩んだ。
< 38 / 150 >

この作品をシェア

pagetop