重なり合う、ふたつの傷
天野くんとの出会い


鏡に映った制服姿の私は少しだけ大人に見えた。

長くていつも束ねていた髪をセミロングにしたからだろうか。


お母さんと二人で朝食を食べる。

無言で食パンにバターを塗り、無言でそれをかじり、無言でヨーグルトを食べて、無言でオレンジジュースを飲む。


二人きりの朝はこんな感じ。無に近い。特に話題を探す必要さえない。


食卓という空は鉛色で太陽も見えないし、それを遮る雲さえもない。


それでも「行ってきます」「行ってらっしゃい」の言葉だけは存在していて、それが私とお母さんの救いでもあった。

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