重なり合う、ふたつの傷
行方不明


天野くんと暮らし始めて一週間が過ぎた頃、ケータイが鳴った。


お父さんからの電話だった。


「梨織、どこにいるんだ」


「えっ、お父さんは?」


「うちだ、うち」


「もう出張から帰ってきたの?」


「ああ。母さんの事が心配でな。梨織はどこにいるんだ」



「カレ」


カレシの家、と言いかけて、言葉を飲み込んだ。

取り敢えず、今日が日曜日でよかった。


「友達の家にいる。ううん、泊まったりなんてしてないよ。……わかった。今すぐ帰る」


私は電話を切った。


「蒼太くん、もう帰らなくちゃ」


「だよな。それがいいと思う。もし怒られたら電話してこいよ。俺が行って、きちんと謝るから」


「平気だよ。私もお父さんに確かめたい事あるし。もう逃げないで、ぶつかってみる」

天野くんは「駅まで送るよ」と言った。




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