犯人は田中殺人事件【短編】
殺人事件
「キャー!」

女性陣からあがる悲鳴。

「おいおい、マジかよ…」

うろたえる男性陣。

全員の視線の先、そこにあったのは仰向けに倒れ首にナイフの突き立てられた女性。腕が傷だらけだ。襲われた際に身を守ろうとしたのだろう。そして体の前面胸から腹部にかけてがメッタ刺しにされている。他殺なのは間違いない。

傷口から広がった血はまだ乾いていない。今もまだ広がりゆく血だまりから湯気が上がっても不思議ではない、そう思える位死にたてのようだ。

動揺し何もする事の出来ない人々の中で一人、私は冷静に思考を巡らせていた。

ここは船でしか来る事の出来ない小さな孤島。島には今我々のいるこの館しか建物はなく、この館にいる人間がこの島にいる人間全員だ。

その上我々がこの島に上陸した直後の今日の昼過ぎから今もまだ天候が最悪なので、海は大シケで船は出入り出来ず、従って島から人の出入りはない。

つまりさっきまで生きていた人間が殺されているという事は、この館に今いる人間の中に犯人がいるという事は間違いない。

こんな容疑者の絞り込みやすい状況で人を殺すとか、犯人はバカなのか?




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