私の師匠は沖田総司です【上】
「師匠……」

私は手紙をギュッと握りしめた。

不安で心細かった心がゆっくりと安心してくる。

気持ちが完全に落ち着くのを待ってから、路地から出た。

目の前に広がった光景は、まさに私が生きていた時代とは異なっていた。

アスファルトで舗装されていない道。

木造の建物。

そして着物を着て歩く人々の姿。

「本当にタイムスリップしたんだ……」

私はしばらく、町の風景を眺めてから路地を出た。

最初の目的として、まずは新選組の屯所に行かなければならない。

屯所へ行って、どうにかして屯所で暮らす許可を得なければ。

師匠の未来を変えるために、できるだけ師匠の近くにいたい。

「あの、少しよろしいでしょうか」

私は道を歩く女性を呼び止めた。

「へぇ、なんでしょう」

「この辺りに新選組の屯所はありませんか?」

「シンセングミ?聞いたことありまへんなぁ」

女性の言葉に衝撃が走る。

新選組がない?

嘘。

そう思って、女性の目を見てみるけど嘘を吐いているようには見えなかった。

本当に新選組はないの……?

「ありがとうございました。では」

「すんまへんな、お役にたてなくて」

「いえ、こちらこそ呼び止めてしまってすみませんでした」

私は女性と別れ、他の人に新選組の屯所をたずねた。
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