私の師匠は沖田総司です【上】
「副長。ぼちぼちご飯でっせ」

「山崎さん」

部屋に現れたのは山崎さんだ。会うのは昨日ぶりですね。

「蒼蝶ちゃん、なんでここに?はは~ん、なるほど」

なにやら山崎さんが意味深な顔で顎を撫でています。

「山崎、妙な想像するな。もう、飯の時間か。天宮はどうする。一緒に食うか?」

「私も一緒にですか?」

「ああ、幹部の奴らも一緒に食うから騒がしいけどな」

幹部と言う単語に私は気付いてしまう。

おそらくそこには師匠がいる。

若い師匠は私の事を嫌っているから、たぶん一緒にご飯を食べるのを嫌がるだろう。

「私は遠慮しておきます。部屋で食べます」

「……総司なら気にする必要はねえぞ」

さすがは土方さん。私が断った理由をすぐに見破るとは。

「1番隊の組長さんは関係ありません。ただ、どこの隊も属していない私が、幹部の人達と一緒に食べるのはおかしいと思うからで……」

真実を隠すために言い訳の言葉を紡ぐ。

私の言葉に土方さんは少し表情を険しくしました。

でも最後は「分かった」と言ってくれました。

「後で部屋に飯を持ってきてやる。だから待ってろ」

「はい」

土方さんと山崎さんが部屋から出て行きました。

一人になった部屋に襖の閉める音がやけに大きく響く。

……さっきから胸が痛いです。

でも、大丈夫。これぐらい。

私は胸を手でギュッと握りしめながら、しばらく土方さんの部屋で座り込んでいました。
< 69 / 472 >

この作品をシェア

pagetop