「……何をバタバタしてるんだ?」


扉から藤原さんが顔をのぞかせたとき、ビニールに入れた濡れた服を、自分のリュックに詰めてファスナーを閉め終えたところだった。

セ、セーフ……。

私はおでこの冷や汗を拭って、藤原さんに笑いかける。


「いえ、あの。お風呂場の水、ぽたぽた垂れてたので蛇口しめてきました」

「ふうん……」


たいして興味なさそうにそう言った藤原さんは、小さな黒いボストンバッグを手に部屋の中に入ってくる。


「ってことはお前、もうシャワー使ったのか?」

「あ……ええと、俺はまだです。使ったのは須賀さんで」


……私の汚い服を洗うためだけどね。

ああ、本当に須賀さんには悪いことしちゃったな。


「俺もまだなんだ。先、いいか?」

「はい、どうぞ」


よかった……。

藤原さんがシャワー浴びてる間に今後の作戦とか色々考えておかないと、すぐぼろが出そうだもん、私。

ほっと胸を撫で下ろしつつ藤原さんがバスルームに行くのを待っていると、彼はなぜかその場で、おもむろに着ていたTシャツの裾を捲り上げた。


「ちょ、ちょっと……! ここで脱がないで下さい!」


ぐるんと身体を反転させて、ちょっとだけ見えた適度に割れた腹筋の記憶を頭の中から必死で追い出す。


「なんでだよ?」

「な、なんでって……」


ああもう、これもすでに女っぽい反応なのかもしれないけど、直視するのは無理なんだもん!

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