「はぁ……」

「どしたの環。ため息なんかついて」


六月に入り、雨の日が続いていたある日。

久々に、出勤前にいつものカフェで小羽とランチをすることになったのだけど……


「仕事……行きたくないなぁって」


私はそう言うと、アイスコーヒーの入っていたグラスのストローを無意味にくるくる回して、氷をカランと言わせた。


「え。最初の頃は楽しそうだったじゃない。好きな仕事だからって」

「そう、なんだけど……最近、失敗続きで」


……そうなのだ。

私は最近仕事に集中できなくて、オーダーを間違えたり、お水をこぼしたり、お皿を割ってしまったり……

同僚たちみんなに迷惑をかけてしまっている。

その原因は、たぶん……


「何か悩んでることでもあるの? あるなら言いなよ。
環って昔から自分のことはあんまり話してくれないから、親友としては寂しいものがあるんだから」

「……私、昔からそうだっけ?」

「そうだよ。前に海でナンパされた時の相手と別れて凹んでたときも、何が原因で別れたとか教えてくれないしさー」


テーブルに頬杖をついて、小羽が口を尖らせる。

……あの時凹んでたの、気づかれてたんだ。

それでも色々詮索しないでただそばにいてくれた小羽って、やっぱり優しいな。

でも……やっぱりこういう話を誰かにするのは、勇気がいるというか、なんというか。


私は声を潜め、けれど何でもないことのように、軽い調子で言ってみる。



「……あの時の人とはさ。私じゃ燃えないって、エッチのときに言われて。それが原因、かな」


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