キスはワインセラーに隠れて
13.危険な看病


須賀さんとスタッフルームに入っていった女性は誰なのか。

彼女の言ってた“クレーム”の内容。

それらを確認する暇もないくらい休憩後は忙しくて、あっという間に勤務時間は終わりを迎えた。


そしてその時、私の頭の中はもう別のことに支配されていて、周りの同僚たちより先にさっさと帰り支度をととのえて、ロッカーの扉をバタンと閉めた。


「お疲れ、環。……なんか急いでんの?」


部屋が蒸し暑いせいか、仕事終わりで体の熱がなかなか冷めないのか、制服の白いシャツを脱いだまま何も着ようとしない本田が、私に問いかける。

いつもなら上半身裸のその姿に照れるとこだけど、今日の私はそれどころではなかった。


「うん。ちょっと、友達のとこに……」

「ふーん……友達」


友達っていうか、同僚って言うか、飼い主って言うか、好きなひ……いやいや、そんなことはどうでもいいけど、とにかく心配なんだ。

あの俺様ソムリエが野垂れ死んでいないかどうか。


さて、何買ってけばいいんだろ……

こないだ読んだ雑誌には、“男はおかゆが苦手”とか書いてあったけど、他に栄養があって消化のいいものって……


「……なぁ本田。風邪引いて熱あるときって、何食べたくなる?」


< 96 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop