「誕生日プレゼントに何か欲しいものある?」
「とくにないけど……」
「ないと困るんだけど……」
 翠が眉をひそめたから、「焼き菓子」と答えた。すると、
「フロランタン?」
 首を傾げて訊かれる。
 フロランタンでもなんでもよかった。翠が作るものは甘いものが苦手な御園生さんでも食べられる範疇にあると知っていたから。それは、先日のバレンタインでも立証されていた。
「フロランタンはもともと作る予定だから、それ以外のもので何かないかな?」
「……思いついたら言う」
 そんな会話をしたのは三月末、ゲストルームを訪ねたときだった。
 その後、何が欲しいとは言わなかったわけだけど、とくだん翠に詰め寄られることもなかった。

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じれじれ  学園恋愛  友情  純愛  男目線  成長  すれ違い 

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