光のもとでⅡ
「相変わらず冷たい手」
「あ、ごめんっ」
 手を引かれそうになって、少し力をこめる。
「別に責めてるわけじゃない。一感想」
 翠はつながれた手を見ると、嬉しそうに口元を緩めた。
「ツカサの手はいつもあたたかいね」
 BGMも何も流れないしんとした部屋で、ただ時間だけが過ぎていく。双方何も話さず、時折お茶を口に運ぶ動作のみ。
 そんな時間を居心地悪いと思うことはなかった。
 考えてみれば、冬の寒いあの日以来、手をつなぐこともキスをすることもなかった。
 俺はいつまでこの状態で満足していられるだろう。いつまで、理性を保つことができるのか――。
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