全部、抱きしめて
「よしっ、電話しよう」

わざとらしくスーツのポッケから、スマホを取り出した。

いいんだよな? と目で訴えられて、あたしは咄嗟に「ダメ」ーーそんな言葉が出ていた。

しまったと思った。
直也が電話を掛ける気が無いことくらい分かってたのに。

どうしてこうなるの?
直也にはいつも主導権を握られてらしまうんだ。

「で、オレ達、何をしようとしてたんだっけ?」

更に意地悪なことを言う直也。

「分からないの?」

「だから教えてよ由里子」

あたしは何も答えず、直也の唇を塞ぎ、ソファーに押し倒した。

スーツを脱がせ、ネクタイを緩めたところで、

「攻められるより攻める方がいいな」



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