ルージュのキスは恋の始まり
 こいつは1度疑問に思うと、回答が得られるまでしつこく俺に聞いてくる。

「・・・・」

「避けようと思えば避けられたでしょう?」

「しつこいぞ、片岡。でも、あえて言うなら目が怯えていたから・・かな」

 瞳が震えていて、逃げたいのに逃げられない。

 あの女はそんな顔をしていた。

「え?」

「近づいてキスした時、普通に驚いたという反応でもなかった。身体が震えていたし、あれは何か訳ありだろうな。だから、とことんけなして叩かれてやった」

 まあ、全部俺の本心だが。

 眼鏡をかけていてもわかる。

 あの女は綺麗な顔をしている。

 なのに、どうして化粧しないんだ?
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