裏腹な彼との恋愛設計図
「「映画館!?」」


私と絵梨子さんの声が重なった。

この辺りには駅前の古びた小さな映画館しかなく、隣の市街地の映画館まで足を運ぶことも少なくない。

だから、新しい映画館が出来るのはとってもありがたいことなのだ。


「私、結構見に行くから嬉しいわ」

「絵梨子さんも? 私もですよ。今話題の“マナと霧の法王”とかも見たいんだよなぁ」

「あ、それうちの息子が見たって言ってたわ。思いのほかバトルシーンがすごかったって」

「本当ですか? わーますます見たくなる~」


三人で笑いながら話していると、突然私の後ろから誰かが図面を差し出してきた。


「あ、矢城くん!」


見上げると、作業着姿の矢城くんが私に微笑みかけている。

現場から戻ってきてたんだ。


「紗羽さん、これ桐原さん宅のファイルに挟んでおいてもらってもいいですか?」

「うん、了解」

「それと──」


図面をデスクに置こうと身体を屈めた矢城くんが、さりげなく私の耳元に顔を近付けて囁いた。


「映画、俺と一緒に見に行きませんか?」

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