裏腹な彼との恋愛設計図
ふいに、朝海の言葉が蘇ってくる。


『それって、その先輩が好きってことなんじゃなくて?』

『紗羽は鈍感だから身をもって理解するのが一番ね』


朝海の言う通りだ……

私ってやっぱり、鈍感でバカなドM女なんだ~~!!


「紗羽さん!」


頭を抱えて悶える私は、矢城くんの声で我に返った。

彼は少し怒ったような、険しい顔で私を見つめている。


「それは違う」

「え……?」

「そんな曖昧な気持ちは、“好き”だなんて言わないんですよ」


──その瞬間、ぐいっと手を引かれた私は、矢城くんの胸の中に飛び込んでしまった。

抜け出そうと試みても、しっかりと抱きしめられて動けない。


「ちょっ、矢城く──!」

「俺は諦めません」


力強い声が耳元で響き、無意識のうちに抵抗をやめていた。

彼の肩越しに、興味深げに私達を眺める人達が見える。


「絶対、紗羽さんのこと振り向かせる」


自分自身に言い聞かせているようにも思える言葉が、私の心臓をさらにつき動かした。

ま、まさか、こんなことになるとは──!


胸の鼓動とともに、二つの恋が急加速し始めていた。




< 65 / 280 >

この作品をシェア

pagetop