大きめのバックは何一つ持っていなかった。財布しか入らないような小さなカバンか風呂敷ばかり。

 仕方なく、学生時代にノートを入れて通学していたカバンに、服を詰め込むだけ詰め込んで、こっそりと家を出た。



――考えは甘いかもしれない。

 働き方も知らない美麗が一人で育てるのは無理かもしれない。でも、あの家に居たら、絶対にこの子は守れない。階段から落とされて無理やり降ろされたりも考えられる。


 病院に行って、まずは診察を受けて、そして母子家庭の援助を受けられるかを病院で聞いてみよう。そう思っていた。


「美麗!」

「!?」

「待って下さい、美麗!」

 そこには、デイビットが立っていた。裏門から抜け出そうとした美麗の前で、裏門のすぐ隣、上着は来ていないものの、ベストを着こみ、爽やかに笑っている。

「デイビット、さん……」

「すみません。会いに来れなくて。ずっと会いたかった」

 デイビットが甘く笑った瞬間、ざわざわと、美麗の心は震えた。期待と後悔と、そして泣きそうになる恋情。

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