それでもキミをあきらめない


○。

ヘアブラシで髪をとかしたあと、いつものクセで三つ編み用に左右均等に分けていた髪を、あわてて戻す。


冬服のブレザーに、学年指定のチェックのリボン。

スカートの丈は翔馬が勝手に詰めてしまったから、ひざが丸出し。


買ったばかりのメイク道具を洗面所に広げて、

キリカさんや翔馬の手つきを思い出しながら顔を作っていく。


器用な彼らと違って手先が思うように動かないわたしは、なかなかうまく道具を使えなくて、

ビューラーでまつ毛を持ち上げるだけでずいぶん時間がかかってしまった。


ようやく変身後の姿に近い奈央になったところで、2階から下りてきた翔馬が洗面所のドアを開けた。

鏡越しに視線が合うと、兄は目を丸める。


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