それでもキミをあきらめない

 
ほかのメンバーたちとちがって、

髪を染めたり、ピアスをあけたりしていない高槻礼央(たかつき れお)君は、

グループのなかでは目立たない存在だ。

 
それでもわたしは、入学したときからずっと、彼だけを目で追いかけていた。
 

だから、純粋に、すごく嬉しかった。




「あんなブスに告るなんて、ほんとすげーよ」
 


すごい、とはやしたてる声に「馬鹿だ」と笑う声がまじる。
 
ローファーにかけた手が、ふるえた。

 
天井に亀裂が入って、一気に崩れ落ちたみたいに。

わたしの心はひび割れ、乱暴な笑い声にあっけなく砕かれる。




『ずっと好きだった。付き合ってください』

 


ほんの数時間前に差し出された、きらきら輝いていた魔法の言葉は、

急に毒々しい煙に形を変えて、消えてしまった。
 


「高槻……礼央」

 

ローファーをつかんだ右手が、ぎりぎりとふるえる。





――――これは、

わたしの……復讐の物語だ。





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