幸せにする刺客、幸せになる資格
★僕の両親~side NORI~
翌日、朝10時。
紅葉が大和を出産する2ヶ月前に追い出されてから、僕は一度もこの家の門をくぐっていなかった。

9年ぶり。
門構えは変わらないけど、周りの蔦が増えたような気がする。

僕が小学生の頃に建て替えられたこの家は、紗英も結婚して家を出たため、今は両親だけが暮らしている。
2人で住むにしては、いささか広すぎるような気がする。

そんなことを考えながら3人で門をくぐり、玄関のインターフォンを押した。

ドアを開けたのは、母さんだった。

会うのも9年振り。
僕は何の言葉を発するのがふさわしいのかが判断できず。ただ黙って一礼し、2人もそれに合わせた。

そんな僕達を見て、

『お待ちしておりました。さ、お入りください』

と、母さんは優しい口調で言葉を掛けてくれた。

『お邪魔します』

神妙な声で言う亜香里を見ると、大和と手を繋いでいる。
まるで緊張を分かち合っているかのように。
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