赤い流れ星3
side 和彦




(野々村さんが、そんな人だったなんて……)



「用があるなんて言って早くに帰ったのは、KEN-Gと会うためだったのか。
野々村さん、積極的~!」

「やっぱり、彼女…本気でKEN-Gを狙ってるんだね。
いや…悪い意味で言ってるんじゃないよ。
幸せになりたいって願望を叶えようと努力するのは素晴らしいことさ。
僕はむしろ応援してる。」



勝手なことを…
俺は、マイケルとアッシュに苛立ちを感じ、それを表に出さないように自制した。
だが…実際はわかっていた。
俺が苛々してるのはマイケル達に対してじゃない。
野々村さんに対してだ。
大河内さんに会いたいのなら、そんな嘘を吐かずにはっきり言えば良いものを…
こういうこそこそしたやりくちは好きじゃない。
俺が苛々するのはそのせいだ。



「でも、残念だけど野々村さんはKEN-Gの好みとは少し違う気がするよ。
KEN-Gはもっと軽くてきゃぴきゃぴした女の子が好きなんじゃないかなぁ?」

「それはわからないよ。
なんだかんだ言っても、最終的にはここだからね。」

マイケルはそう言って、親指で胸を指し示した。



「野々村さんの純粋で熱い想いが、もしかしたらKEN-Gのハートを掴むかもしれないよ。」

「彼女にそこまで積極的な行動が出来るかな?」

「僕は出来ると思うね。
恋の魔力をあなどっちゃいけないよ。」

「じゃあ、賭ける?」



「やめとけ…」



俺の言葉に、二人の顔から浮かれた微笑が消えた。



「野々村さんは真剣なんだ。
人の気持ちを、賭けの対象になんてするもんじゃない。」

「……そうだね。ごめん、カズ。」

アッシュも小さく首をすくめて、俯いた。



「そんなことより、今日は思いっきり歌うぞ!
さ、美幸も早く食べてしまえ。」

「え?は、はい…」

本当に美幸はいつもぼーっとしている。
やることなすこと、すべてがスローだし、効率が悪い。
こんなんじゃ、どこにいっても長続きはしないだろう。
やはり、美幸にはそれとなく男を紹介して、早く結婚させた方が良いだろう。
野々村さんも、きっと自分のことで頭がいっぱいで、美幸のことなんて相談しても迷惑がられるだけだろうから、もう相談するのはよそう。
これからは、俺だけの考えで美幸をなんとかしてやろう…
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