理想の都世知歩さんは、

“優しい四名様”





【SIDE 山羊 二雲】



衵から、アパートに戻るとメールが来た正月明け。

驚きの余り咽た私。


すぐ、大丈夫なのかと文字を打って、指を止めた。


大丈夫かなんて聞いたって衵は絶対大丈夫だと返すだろうし、返されたって顔を見なきゃそれが本心かどうか判らない。

だから会おうって返した。


衵が顔に隠せるほど器用じゃないことくらい解るから。






会った夕方、適当なファミレスに入ってご飯を頼み、息つく間もなく口を開いて問うた。


衵に急かすようでごめんってそれだけ加えると、衵は『ありがと』と笑って返した。


『お礼言われるようなことひとつもしてないんだけど』

『いやいや、私、二雲に愛されてるなぁって感謝よ』


ふざけて頬杖なんかついて、やれやれって顔して、それから。



大丈夫なの?


と。


メールに打ち込めばたった六文字だった、言わなかった言葉に対する答えを、声に灯した。



『勝手に戻ったのは私だからさー、二雲』



別に必要とされたわけでもないんだよって言った衵は微笑んでいて、問うた筈の私は何も言えなかった。

脳裡にはただただ、あの日電話越しに声を押し殺していた衵の呼吸音が響いていた。


「  」を自覚して、「  」を隠した、あの日。





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