透明ニンゲンと秘密のレンアイ

トラウマ



 私達が向かったのは、水族館。

 これはヘンタイのリクエスト。まあ私も魚好きだし。


 水族館を満喫したら、お昼ご飯を食べて、帰るつもりだ。


「おー、結構デカイな」


 ヘンタイは水族館を見上げ、感心したように言った。

 この水族館は最寄り駅から徒歩10分の所に、今年3月に建てられた水族館だ。

 確かに大きい。


「よし、行くかっ」

「うん」


 ヘンタイは私の手を引いて、入場口まで行った。


 もう手を引かれるのに慣れちゃったよ。


 入場チケットを係員さんに渡して、私達はゲートをくぐる。


「おお、すげぇ」

「わあ……」


 ゲートをくぐって、最初に目に入ったのは、沢山の綺麗な魚達が泳いでる、壁一面の大きな水槽。


「さっかな~♪ おい、早く行こうぜ」


 そう言ってヘンタイはさっさと水槽の近くに行ってしまった。


 魚、好きなのかな。


 私も後を追う。


「あ、見て若桜ちゃん! あの魚めっちゃキレくね!?」


 私が来るなり、ヘンタイはそう言って一匹の綺麗な魚を指差した。

 輝くような青と黄色が混じってて、確かに綺麗。


「あ! あれ映画で見たことある魚だ! 本物は小っちぇえな」


 次にヘンタイが指差した魚は、私も某アニメ映画で見たことがある魚だった。

 私がそれを見て間もなく、ヘンタイは色んな魚を見てははしゃいでいた。


「……プッ」


 そんな無邪気な横顔を見てると、不意に笑いがこみ上げてきた。


「何笑ってんだよ」


 ヘンタイが怪訝そうに訊いてくる。


「ふふっ……だって、何か可愛いんだもん」


 私は笑いながらそう答えた。


「はっ? 可愛い?」

「ううん。気にしないで」


 益々怪しむヘンタイに、笑いながら手を振った。


「えー? そんなん逆に……」


 ヘンタイが反論しかけた時、館内放送が流れた。


『間もなく一階ホールでイルカショーが開催されます』


「イルカショー!? 見たい! 見たい!」


 私は「イルカショー」というワードに反応した。


 イルカ大好き!

 可愛いよね。


 ヘンタイはちょっと驚いてたけど、少し苦笑してから


「お前のが千倍可愛いな」


 と言ってきた。


 私の顔がボッと熱くなる。



「な、いや、うるさいな!」


「へいへい。んじゃあイルカショー見に行くか」



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