キミとの距離は1センチ
呆然とする伊瀬の横をすり抜けて、わたしは廊下を駆け出す。

彼は、追いかけて来ない。……当然だ。きっとこれが、伊瀬自身が望んだ展開なのだから。



「……ッ、」



じわりとにじむ視界をこれ以上広げないために、下くちびるを噛みしめる。


……大切な同期って、思っていたのは……わたしだけ、だったんだ。

そりゃ、そうだよね。わたしいつも、身長のことで、からかったりしてたし……本当は迷惑だったのに、きっと無理して、相手をしてくれてたんだ。


だけど……これでもう、終わり。

もう、迷惑かけたり、しないから。

……伊瀬、ごめん。

今までごめんね、伊瀬。




「……うおっ、びびった!! って伊瀬どーしたんだよ、こんなとこで頭抱えて」

「ああもう……! あんたらのせいだ……!」

「はあ?」
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