キミとの距離は1センチ
「……うわ。ちょっと伊瀬くん、きみ今死にかけの魚みたいな顔してるけど、大丈夫?」



人の顔を見るなりそんな失礼極まりないことを言い放ったのは、偶然廊下で会った宇野さんだ。

心底嫌そうな顔をもはや隠そうともせず、俺はその場に立ち止まる。



「……お疲れさまです、宇野さん。そりゃあ完成度の高いあなたの顔面に比べたら、俺の顔なんて魚みたいなものでしょうけど」

「お疲れ。というか俺のところにもウワサ届いてるんだけど、今伊瀬くんと珠綺ちゃん、なんか微妙な雰囲気なんだって? 何がどうしてそうなったのさ」

「……少しは人の話聞けよ……」



思わず漏らした本音のつぶやきは、どうやら目の前にいる人物の耳には入らなかったらしい。

ほんとこの人、我が道を行くよな。どこが王子だ。いや、そういうところが王族っぽいのか?
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