ある夜のことだった。

「…油断も隙もない。」

離れの研究室に近い勝手口にもたれながら栢木は呟く。

屋敷内から見える庭の景色、その視線の先にいるのは彼女の主人である相麻北都の後ろ姿だった。

諦め半分で吐いたため息を置いて壁から体を起こすと足を動かす。

時は誰もが寝静まる真夜中。

「時間を考えてくださいよ。」

文句が出てしまうのも仕方がない、栢木が目を覚ましたのは物音が耳についたからだった。

凄く小さな物音だったような気がする。しかし強く反応して栢木はベッドから起き上がったのだ。

静まりかえった夜更けの時間、時を刻む振り子の音と深夜独特の耳にくる静かさの中に潜む音が屋敷を包んでいる。

それぞれが夢の中で過ごし明日に向けて体を休めている時間だ。

そんな中、微かな音と気配を感じて栢木は目を開けた。

何を敏感になっているのだと自分を咎めたが、物音がしたのは北都の部屋がある方向だと気付きすぐに意識を変える。

傍にある上着を掴んで音の後の気配を探った。

階下の方で何かが動いている気がする。

まずは主人の安否確認をしなければいけないが、栢木は北都の部屋を背にしてそのまま下に向かっていった。

「やっぱり。」

勝手口を出てすぐに栢木は自分の判断が正しかったと確信を得る。

扉を開けた先、月の光が降り注ぐ中をこの屋敷の主人である北都が歩いていたからだ。

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