屋敷の中に来客を知らせる鈴の音が響いたのは昼時を少し過ぎた頃のことだった。

「本社からの馬車だ。」

誰かの声が聞こえて屋敷の中が少し慌ただしくなる。

本社から、それはつまり相麻製薬からの使者をさしていた。となれば馬車に乗っているとされる人物は限られている。

社長である相麻千秋か、それとも。

「まあ、三浦さん。」

馬車を迎えたマリーが第一声にその人物の名を呼び上げた。

その声に導かれるように降りてきたのは三浦トオギ、若くして社長である相麻千秋の秘書を務める相麻製薬の重鎮だ。

「こんにちは、マリーさん。北都さんはご在宅ですか?」

「はい。すぐにお呼びします。どうぞ応接間の方へ。」

「ありがとうございます。」

物腰柔らかな雰囲気からは感じられないが、かなりの切れ者であると評判の高い三浦は女性からの人気も高い。

マリーと共に屋敷内を歩く三浦の姿を見つめる為、メイドたち女性陣は遠くにいても作業の手を止めてわざわざ出迎える程だった。

今日もまたぞろぞろと頬を薄紅色に染めたメイドたちが姿を現し始める。

「皆さんどうも、お疲れ様です。」

「は、はい!ありがとうございます!」

三浦もまた惜しげもなく愛想を振りまくもので彼の人気は増すばかりだ。

黄色い悲鳴を背中に受けても気にする素振りなく歩き続ける様は流石だった。

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