相麻の別宅である北都の屋敷では、今日も変わらない朝を迎えていた。

廊下や部屋の中をばたばたと動き回る使用人が多い。

そんな中、屋敷の主人である北都が私室から姿を現した。

「おはようございます、北都様。」

彼が通るたびにかけられる挨拶、それらに応える事無く北都は下の階を目指して歩いていく。

貴公子然とした立ち振る舞いは、まるで北都の周りだけ空気が違うように感じさせた。

挨拶に迎えられながら進んでいくと、いつものように食事用の部屋の前でマリーが微笑みを浮かべて待っている。

「おはようございます。」

毎日同じように軽くお辞儀をして口数と表情の少ない主人を迎え入れた。

反応はない、今日もそうだろうと思っていたマリーはいつものように北都を通りすぎるのを待っていたのだが。

「あいつはいるか?」

普段なら何も言わず部屋に入る北都からまさかの声がかかった。

「いえ、今朝はまだ出てきてないみたいですが…。」

予想外の事に戸惑いながらもマリーは答える。

北都の言う“あいつ”とは誰なのか、それを見付けるまでにかかる時間は僅かだったが問題はそこではなかった。

「栢木のことで宜しいですか?」

本当に求めているのは栢木の情報なのかと一応問いかける。

マリーの言葉を受けて、消化するように少し間を取ると信じられない言葉が北都から聞こえてきた。

「今日は起こさないようにしてやってくれ。」

「え?」

それだけ言い残すと、マリーの反応も見ずに部屋の中に進んでいった。

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