あ、死ぬな。


 そう思った瞬間、誰かの手に強く背中を押された気がした。

 バランスを崩し、アスファルトに頬を擦りつけ、耳障りな衝撃音に鼓膜が揺さ振られる。

 それに眩暈を覚えながら手をつき起き上がろうとする。
 顔を上げると、電柱にぶつかり歪んだバンパーと蜘蛛の巣みたいな模様を描くフロントガラスの車、道路に散らばったウインカーの破片の赤い輝きが目に飛び込んできた。
 それと、それと、私の赤いリボンが――

 電柱にぶつかった車からよろめくように運転手が出てきて、私の元へ駆け寄ってくる。
 怪我はないか救急車を呼ぼうかなどと話し掛けてきているようだったが、私は答えられないでいた。

 赤い煌きに目を奪われて、身動きが取れない。


「サクラくん?」


 私の赤いリボンが道路に落ちている。
 空はこんなにも晴れているというのに、まるで雨に打たれたように濡れて赤い色を深くする。

 私のリボンを濡らすのは何?
 私の背中を押したのは誰?
 私を庇ってくれたのは?

 さっきまで一緒にいたサクラくんの姿が見えない。


「サクラくん!」


 私の赤いリボンを濡らす物が、車の下から流れ出す赤い液体であることに気がついていた。


 これは、いったい何の夢?