世界でいちばん、大キライ。
「ヒドイジョークだなぁ~。追い返そうとしなくてもいいじゃん。ねぇ? モモカ」

バッと顔をのぞかせた桃花を見るなり、人懐こい笑顔で笑うのはジョシュア。
その隣で了は呆れ声を零す。

「ジョシュがいると、片付けが全然進まないし。どーせここで追い返しても、家に来るだろ」

期待していた分だけ、落ち込み具合は倍になって返ってくる。
あからさまにがっかりとした顔をしてしまった桃花を見たジョシュアは、カジュアルな革靴をコツッと鳴らして桃花に近づいた。

自分の感情の整理をまだ出来ないまま、戸惑った目でジョシュアを見上げる。
すると、ふわりとさりげなく桃花の肩に手を置いたジョシュアがニコッと白い歯を見せた。

「ザンネンでした! 今日はリョウとじゃなくてモモカとディナーすることに決めたっ」
「えっ……」
「ね、いいよね? じゃ、行こう行こう」

ジョシュアは強引に話を進めると、カウンター席に置いてあった桃花のカバンを手に取った。

「荷物はこれだけ?」
「え、あ、はい……いや!」

カバンを桃花に渡さずにジョシュアは持ったまま、再び肩を抱いて誘導するように出口に向かう。
唖然としたままの桃花に、了が口を挟んだ。

「ジョシュ! 変なことするなよ!」
「『変なこと』ってナニ? じゃね~リョウ」
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