世界でいちばん、大キライ。
数十秒後。

久志は顔を上げて右手の親指をそっと、画面に置いた。

(いや。これは、あれだ。一応〝保護者〟として! 確認の電話!)

耳元にあてたスピーカーから聞こえる規則的なコール音に、誰にだかわからない言い訳を心の中で並べると、数コール目で応答が聞こえた。

『もっ、もしもし……?』

少々上ずった声を聞けば、自分からの電話がまさか本当にあるなんて、と驚かせてしまったんだろうと久志は申し訳なくなる。

「あー……もしもし。えーと……」

(あれ? そういや、俺、名乗ってたっけ? やべぇ、記憶にない……)

大の男が電話を片手にそわそわとする様子を麻美に見られでもしたら余計に冷ややかな目をされるだろう。
しかし、今の久志はそこまで考える余裕もなく。

軽く咳ばらいをしてから、改めてこう言った。

「曽我部久志、です。この前の……」
『はい。電話帳にそう登録されてたのでわかります』
「あ……」

(考えたらそうだった! マジダセェな、俺!)

額を片手で抑えつつ、「はぁ」と深い溜め息を吐いてからは、久志ももう落ち着いたらしい。
リラックスした状態で用件を口にした。

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