「え? キスどころか、手すら繋がなかったってこと?」

木曜日に、麻美はまた学校帰りにソッジョルノに立ち寄っていた。
早番の桃花はまた窓側に座る麻美に向かい合うように座って、飲みこもうとしたカフェラテでむせ込む。

「ぐぉほっ……! ちょ、ま、麻美ちゃ……ごほほっ!」

涙目になりながら、口元に紙ナプキンを抑えながらもなおなにかを口にしようとする。
しかしそれが叶わない桃花を涼しい顔で見た麻美は、ココアを優雅に飲みながらぼそりと呟いた。

「……ホント、あんな大きな体して……ヒサ兄の意気地なし」
「ぅえ? ……ごほっ」
「……なんでもない」

桃花は自分の咳で麻美の声が聞こえていなかった。
ようやく咳が落ち着いたときに、再び麻美の口から驚きの言葉が飛び出してくる。

「桃花さんの元カレってどんな人たちだったんですか?」
「ぶっ……!」

せっかく落ち着きかけたのも束の間。
今仕切り直してラテを口に入れようとした直前のセリフにまたもや吹き出す。

「なっ……な、な、なにを……」
「だって。桃花さんの提案ですよねぇ?」

ツンとわざと澄ました顔をして麻美が指をさしたのはココア。

(うー……『ココア飲んでるときは腹割って』だなんて言わなきゃよかったよ!)

悶絶するようにカップを握りしめ、観念するように「はぁ」と息を吐いた。
がっくりと頭を下げて、ぽそぽそと自信なさげに小声で答える。

「い、いるにはいたけど……どんなと言われても……フツーの……」

ごにょごにょと口を動かす桃花とは逆に、麻美ははっきりと言う。

「別れた原因とかは?」

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