スイートな御曹司と愛されルームシェア
第十章 誓われました
「ステキなお式だったね」

 黒の細身のスーツ姿の翔太が、結婚式場のホテルのラウンジで、向かい側に座っている咲良に言った。今日の咲良は母の強引さに負けて、藤色の振り袖を着ている。裾に向かって色合いが濃くなる大人っぽい柄のため、あと三ヵ月ほどで三十歳になる咲良が着ても大丈夫だと母に太鼓判を押されたものだ。

「あんなにおしゃべりで口うるさい妹でも、今日ばかりは世界で一番キレイに思えたなー……」

 咲良が余韻に浸りながらうっとりした顔で言うと、翔太が内緒話をするように、咲良の方に上体を寄せた。

「でも、俺は咲良さんの方が世界で一番キレイだと思うな」
「さすがにそれは言い過ぎでしょ」

 頬を染める咲良に、翔太がきっぱりと言う。

「本当だよ」

 付き合い始めて半年が経ち、翔太もいつの間にか咲良に敬語を使わなくなっていた。それでも、従順で温和なのは変わらない。夜以外は、の話だけれど。

「振り袖姿の咲良さんを抱いてみたいな」

 低い声でささやかれ、咲良は誰かに聞かれてはいないかと思わず周囲を見渡した。

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