レベル1でラスボス当てられた気分です
誰も助けてくれない
私は平凡を絵に描いたような女だ。

しかし、最近その平凡が崩れかけていた。
私自身は何も変わりない。

なぜこんなことになったのか…


私は親の転勤により、転校を余儀なくされた。
それはいい。友達と離れてしまうのは寂しかったけど仕方ない。
編入試験のために勉強も頑張った。それも仕方ない。
至って普通だ。何も不思議ではない。


なのに何故、私が美男子に迫られるとか意味不明な事態になったの?


原因は転校初日。
道に迷ってしまった私は運良く発見した同じ制服を着た人に学校はどこか尋ねた。
案外近くにあった目的地に安心し、その人にお礼を言って別れた。

…うん、普通だよね。どう振り返っても普通。
道を教えてくれた人に感謝して何が悪い。
その人こそ今迫ってきている美男子なのだが、好かれるポイントどこにあった。


「なんで私があなたに好かれているのか、さっぱりわからない。」
「一目惚れかな?もう好きになっちゃったんだから理由なんて何でも良くない?」
「一目惚れされるような容姿は持ち合わせておりませんどなたかと間違えてらっしゃるのではありませんかそれでは失礼します!」


一息で言い切ってから猛烈なダッシュをして何とか逃げきった。また明日ねー!とか聞こえたけど私は明日も明後日も会う気はない。永遠にさよならは難しいかもしれないけどせめて1週間、出来れば何ヵ月かのさよならをしたい。

危なかった。

壁ドンとかやるヤツ初めて見た。
自分に自信ないと無理な技だよね。ドン引きだよ、まったく。


理由なんて何でもいい?…冗談じゃない!

転校初日で知らなかったんだから仕方ないじゃない。
確かに綺麗な顔した男の子だとは思った。だからなんだ。私には関係ない。道を聞いてお礼言っただけのことがヤツに対しては普通ではなかったなんて知るわけないだろ!!(涙)


なんとヤツはあんな顔をしているがために女性不信に陥り、挙げ句会話だけでもアレルギーや蕁麻疹まで起こす極度の女性恐怖症だったのだ。

それが何故か私には大丈夫だったようで、以来付きまとわれている。

正直、知るかそんなもん!!だ。私だって同情くらいはする。
だけどそれだけなのだ。迫られるとかなんだ。関係ないだろ。


転校して1週間もするとヤツの存在は私の耳にも入った。
超絶美男子が同じ学年にいて大層モテているが誰も近寄ることすら叶わないんだそうな。 そんな彼が一人の女子生徒を探していると噂になっていた。
周りの女子は「私のことかしら」と夢を抱いていた。当の私は「平和な学校で何よりだ」などと的外れなことを思っていたのだが、この頃に戻れないだろうか。

とうとうヤツが私のクラスに辿り着き「…見つけた」と呟きながら微笑をたたえて近付いて来た時の戦慄は思い出したくない。

近付いて来るヤツを見て「あ、あの時の…」と思ってもう一度お礼を言おうかと考えたが周りの雰囲気の異常さに止めた私えらい。
女子はヤツに近寄らないよう一定の距離を保ち、悲壮感漂う悲鳴を上げる者と微笑にヤられて失神寸前の者に別れた。対して男子は静かに歓声を上げ控えめに拍手する者までいた。なんだ男子にまで信者が多いのか無敵かコラ。

そこで気付いたのだ。
あの時の綺麗な男の子が例の超絶美男子で、探している女子生徒は何故か私だったのだと。

周囲の反応から味方がいないことを察した。
平凡が崩れ始めた瞬間だった。


あれから1ヶ月。
毎日やってくるヤツから逃げる日々が続いていた。
転校してから友達が出来ていないのはヤツのせいだ。
「なんであの子が…」「彼が可哀想」「一体どうやって」などヒソヒソしているつもりなのかもしれないが全部聞こえてるよー。

「おはよう」
「………………」
「今日は昼ごはん屋上で食べない?」
「………………」
「お弁当持ってきた?」
「お弁当ではないので別の方とどうぞ」
「じゃあ学食に行こうか。迎えに行「だまれついてくるな」
「黙らないし付き合えるまで頑張るから諦めてね」
「ストーカー宣言ですか犯罪はやめてくださいさよなら」

おい女性恐怖症どこいった。
思わずそうツッコミを入れた時に「君に解いてもらった」と言われ背筋が凍った。続いて「君以外はダメだけどね」なんて言ってたけど気のせい気のせい。
無視したり暴言吐いてみたり睨んでみたりしてみたけど「聞き上手なんだね」「本音で話してくれて嬉しい」「やっと目があった」と返ってくる辺り手強い。鉄のハート勘弁。
最初はちゃんと返事をした。
付き合って欲しいと言われてごめんなさいと言った。
次の日も言ってきたのでもう一度断った。4日目からは姿が見えた瞬間ダッシュで逃げてみた。3回目で捕まった。ヤツには味方が多いのた。

絶望的状況。絶体絶命。四面楚歌。


不本意ながらヤツに陥落するまであと数日。
つまるところ、平凡な私にヤツは手強すぎたようだ。




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