王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

「それじゃあ、完成には少なくとも3日はかかるってこと?」

「そうらしいな」


キットのあまりにあっさりした答えに、逆にエリナのほうが取り乱しそうになってしまう。


エリナのほうには、たいしたタイムリミットはない。

はやく帰りたいのは最もだが、禁断の青い果実が手に入りさえすれば良いのだ。


だが、キットには神託がある。


今日を含めて5日以内に禁断の青い果実を食べなければ彼の命と、そして彼が治めるはずのガーランド王家による国は失われてしまうのだ。

ラズベリーを得るまでにはまだ時間があるにしても、一刻もはやくはちみつを手に入れなければならないというのに。


(なんでこの王子様、こんなにのんびりしてるの……!?)


キットのぶんまでショックを受けたように青い顔をするエリナに気付くと、キットは目尻を下げて優しく微笑んだ。


「心配するなって、なんとかなる。俺が死んだって国が滅びるわけじゃない。親父は悲しむかもしれないけど、ガーランド王家がなくなるだけだ」

「だ、だけど……」


変な王子様だ。

王家と自分の命にさしたる執着がないというのなら、なぜこんなに熱心に禁断の青い果実を完成させようとするのだろう。
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