エドガーの手を取り、馬車を飛び降りたエリナは、恐縮して膝を折った。


「ウィルフレッド・ランス公爵の下で侍女をしております、エリナ・オースティンと申します」


エリナはただの侍女であって、"レディ"の称号など持たないのだから、本来ひとりで伯爵家の招待を受けることもないはずなのだ。

それなのにわざわざこんなところまで迎えに出て来てもらって、恐縮しないわけもない。


「今夜はご招待いただいて、誠に……」

「あ、いいからいいから! ウェンディのお客様が社交界から来てくれるなんて、はじめてのことなんだ。僕も嬉しいんだよ」


頬を緩めて親しみやすい雰囲気を放つエドガーは、畏るエリナを遮って屋敷の方へとエスコートする。


その姿は本当に紳士的で、あまりに予想と違うので、エリナは内心で少し驚いていた。

昨夜のランバートの態度から考えれば、いくらウェンディから招待を受けたとはいえ、ランス公爵家の侍女であるエリナがこんなふうに歓迎されるとは思っていなかったのだ。


エドガーは面食らうエリナを連れて屋敷の扉をくぐり、贅沢に明かりの灯されたエントランスを抜けていく。

ウィルフレッドの屋敷も当然立派なものだが、伯爵家の屋敷には一目で高価なものとわかる調度品や絵画が置かれているのに、どこか厳粛な雰囲気が漂っていて、持ち主の性格を思わせた。

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