ランス公爵家の本邸には、コの字型の棟に囲まれるようにしてはじまり、ずっと奥の方まで広がる立派な庭園がある。

正確なシンメトリーで設計され、常に手入れの行き届いた広大な庭園の一角には、比較的こじんまりとした薔薇園があった。


ガラス張りの建物の鍵は当主にのみ保有を許され、彼に許された者しか足を踏み入れることができない。


薔薇園の中は豊かな月の光で満ち、小さなアーチや可愛らしいガゼボのまわりで、青い薔薇だけが咲き乱れていた。


ウィルフレッドは至る所に目を奪われてなかなか進めないウェンディに歩調を合わせ、花園の中に作られた小径を案内しながら、彼女の小さな手を優しく引く。

やっと一周し終えてから、夢を見るように惚けているウェンディを一旦ガゼボの中に連れ込み、そこにあるベンチに座らせた。


キットとエリナはもう何度もここへ来たことがある。

青い薔薇は何度見ても美しいものではあるが、今はその美しさに心を奪われている場合ではなかった。


ウィルフレッドとウェンディの邪魔にならないよう、薔薇の茂みに姿の隠れる場所を選んで、青い花びらに手をかけた。

この作品のキーワード
ファンタジー  王子様  公爵  恋愛  あまあま  キス  トリップ  溺愛 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。