ウィルフレッド・ランス公爵は王宮が主催する1年でいちばん大きな舞踏会に出席するために、王都に滞在していた。

それに伴い、彼の黒髪の侍女も王都にある公爵の別邸にいる。


そして今、公爵の乳兄妹でもある彼女は、庭の隅で1羽のカラスと格闘していた。




「もう! どうするんですかコレ! なんなんですかその格好! 意味わかんない!」


彼女は近くにあったホウキを手に、真っ黒いカラスを追い掛けるが、カラスの方はまるで彼女の動きを全てわかっているかのようにひらりひらりと身をかわす。


「まあまあ、とりあえず落ち着いてくれよ」


そしてしゃべった。

カラスは庭にある背の高い木の枝に止まり、地面の上で一生懸命ホウキを突き上げてくる黒髪の侍女を見下ろす。


しかしやがてホウキでカラスを払い落とすことは諦めたのか、キッと眉根を寄せてきつく睨みあげてきた。

その表情には、彼が今まで見たことがないほどの困惑が浮かんでいる。

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