ウィルフレッドの邸が茜色に染まり出す頃、時計はようやく夜の8時を指していた。

この世界の昼は随分と長いらしい。


夕食を済ませたエリナは、城から帰ったウィルフレッドに呼ばれて彼の書斎を訪れた。

壁一面にぐるりと本棚が備え付けられていて、部屋の奥にはぽつりとウィルフレッドの机が置いてある。

ウィルフレッドはそのデスクに深く腰掛け、実の妹のように可愛がってきたエリナの空色の瞳を見た。


神託のことはもちろん、ウィルフレッドがコールリッジ伯爵令嬢との政略結婚を目的に彼女に近付くということは、すべて秘密裏に進めなければならない。


しかしウィルフレッドは結婚の話を聞いたときから、エリナには話そうと決めていた。

彼女をこの厄介な話に巻き込むことには多少抵抗もあったが、幼い頃から共に育ってきたエリナは、彼が心から信頼できる数少ない人物でもある。


「急なんだけど、結婚しなくてはならなくなった。コールリッジ家との婚姻関係が必要なんだ」

「あっ……」


ウィルフレッドはなるべくさり気ない口調で切り出したが、エリナは空色の瞳を丸くして小さく声を上げた。

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