今夜は月が綺麗だ。

ホールの中ではまぶしいほどの灯りが金色の壁に反射し、目に映る全てのものをまっすぐに見ることもできない気分だったが、ここはそうではない。


ウェンディを照らすのは控えめで優しい月だけで、ひと気のない庭園を淡く浮かび上がらせる。

風が木々を揺らす音も、涼やかな夜の香りも、肌を撫でる冷たい空気も、今ははっきりと感じられる。

窮屈に詰め込まれていた感覚が少しずつ戻ってくるようで、ウェンディはすぅっと深く息を吸い込んだ。


目を閉じて、右手を宙に差し出し、左手でふんわりと広がったスカートをつまんだ。

ワルツは好きだ。音楽も。

社交界には馴染めないと思っているのに、いつか素敵な紳士と出会って忘れられないワルツを踊ることを夢に見ている。


風に乗ってステップを踏み、誘われるように鼻唄を歌った。


舞踏会への純粋な憧れと、自尊心からくる舞踏会への嫌悪。

ウェンディの心に複雑に絡みつく嫌な思いも、月の光が慰めてくれるようだった。

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