王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
男の顔に見覚えがあるのは当然で、それは彼女のよく知る顔だ。
髪の色も瞳の色も、あの写真とは違う。
しかしそれは紛れもなく、弥生の部屋に飾ってある写真に写る、瑛莉菜の初恋の相手と同じ顔をしているのだ。
(やよい先生のバカ……!)
どうせ弥生があの写真を見ながら、ランバートをこの容姿に設定したのだろう。
ランバートと初恋の相手が別人なのはわかっているが、久しぶりに間近で見たショックからエリナの身体はすっかり固まっていた。
カチコチになるエリナにはお構いなしに、腰に回った腕に力が込められ、身体がぴったりと重なる。
「やっ……!」
抱きしめる腕の強さと感触に半ばパニックになって身をよじったとき、腕を掴まれ、そうかと思えば突然引っ張られてランバートの腕から解放された。
しかし自由になったのはほんの一瞬で、たちまち他の誰かの腕が身体に絡みついてくる。
ウィルフレッドが助けに来てくれたのかと思ったが、男の胸に受け止められ、力強く抱きしめられると、不思議とそれがウィルフレッドではないことがすぐにわかった。
「ランバート・ヴェッカーズ伯爵。たった今から、俺に許可なく彼女に触れることを一切禁ずる」