王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

エリナが髪を乱されるまま嫌がる素振りも見せずに自分を見上げていることに、バカみたいに優越感を煽られる。

例えばこの場で彼女を力でねじ伏せ、唇を奪ってしまうことくらいは造作もないことだというのに。


「心配しなくても、大丈夫ですから」

「だあーっ、なんだって、そう……」


眉間にシワをつくるキットを安心させようと思ったのか、エリナは物騒なことを考えるキットから離れるどころか、彼に向かって微笑んでみせる。

キットはエリナの髪から指先を引き剥がすと、その柔らかな感触をごまかすように、自分の髪をボサボサと乱暴に乱した。


(これじゃあ、心配っつーよりただの嫉妬だろ)


こんな気持ちにさせられるのは、彼女のことをよく話に聞いていたからなのか。

そして、ランバートがあの顔をしているからだろうか。


キットとしては、どうしてもエリナをランバートにだけは近寄らせたくないのだが、確かにエリナの言う通り、あと5日のうちにラズベリーを手に入れるためには、今ここでランバートとの繋がりを断つわけにもいかなかった。


「まあいい。俺はそのためにここにいるんだ」


誰かが、彼女を守ってやればいいのだ。
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