自分に言い聞かせるように憮然と呟いたキットは、胸ポケットに片手を突っ込み、使われずにしまってあった仮面を取り出した。


「きゃっ」


そして有無を言わせずエリナにそれをつけさせ、ランバートに抱き寄せられたときから少し乱れているドレスを直す。

キットの指が素肌に触れると、エリナの肩がピクリと跳ねた。

本当は自分のジャケットを羽織らせてでもエリナの肌を隠したい気分だったのだが、とりあえず我慢することにした。


キットから見てどんなに露出が過ぎる無防備な格好でも、ここでの流行りで一般的なドレスなのだとわかっているから仕方がない。


「俺は俺のしたいようにするから」


そう宣言されて、エリナはなんとなく気圧されて頷いた。

怒っているわけではないと思うのだが、なぜキットがこんなに不機嫌なのか、エリナには理解できない。


(なんか……ちょっと変わった王子様)


王子らしい紳士的で精悍な見た目に反して、ときどき仕草や口調が荒いし、なんとなく風変わりだ。


「まあとにかく、会えてよかった」


エリナが不思議に思って見つめていると、仮面の奥から注がれる視線に気付いたキットが、ふっと瞳を緩めて笑う。

しかしそう言って向けられた笑顔は思いがけず色香を纏うもので、エリナは戸惑いに揺れる鼓動が、どこかで別の音を立てるのを聞いたような気がした。

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