王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
♡3日目

・初恋ノスタルジア






翌朝。

舞踏会の後、城にある客室で夜を明かしたウィルフレッドとエリナは、ここへ来たときと同じように、王都にあるウィルフレッドの別邸へ戻るべくランス家の馬車に乗り込んだ。


ただ来たときと違うのは、馬車に乗っているのはふたりきりではないということだった。


「城にはブルーローズもはちみつもなければラズベリーもない。肝心の俺が大人しく城に篭ってるわけにはいかないだろ」


というのが、なんだか風変わりな王子の言い分で、並んで座るウィルフレッドとエリナの前には、王家の人間の外出にしては随分とラフな格好のキットが座っていた。

見た目は紳士的だし、十分に王子様らしいキットであるが、公の場でいったいどんなふうに畏まった振る舞いをするのか、いまいち想像ができないエリナである。


「でも驚いたな、まさか俺の知らないところでエリーとキットが会ってたなんて。彼女を助けてくれてありがとう」


あの後、キットに部屋まで送り届けられたエリナはそのまま寝てしまったから、昨夜の出来事はウィルフレッドには伝えていなかった。

ウィルフレッドには待たなくていいと言われていたし、実際彼が部屋に戻ったのは随分遅い時間だったようだが、おかげでキットから昨夜の出来事を聞かされたウィルフレッドは、驚きと嫌悪と安堵が一気に押し寄せたような複雑な表情でキットに礼を言った。
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