降り注ぐのは、君への手紙

最近教えてもらったことだが、亡者が書いた手紙は、その亡者の基本情報と手紙の処理内容を合わせて、死後の世界の役所へと送られるらしい。

俺はよくわからないが、十王審査とかいうのがあって資料として使われるのだそうだ。

うっかり恨みの手紙なんて書いたらいけねぇんだな、とここでようやく理解した。


後は手紙を書かせる便箋。

あれはヨミがロール状で持ってきた長い紙をカットして作られる手製だ。

「今まで一人でコツコツやってて寂しかったですよ」といい、ヨミは主に俺をこちらの戦力に使いたがる。

便箋って買うもんだろ、作るもんじゃねーだろ、という今までの俺の常識は通用しない。



真面目に仕事をこなすこと一時間。

俺は唐突に飽きた。
もともとデスクワークは苦手だ。長時間立ってろって言われたほうがまだ楽。


「茶でも入れよ」


グシャグシャと髪をかきむしって、お湯をわかし、自分用にコーヒーを淹れる。
そしてカップを持ちながら、なまった体を伸ばすために局内中を歩きまわった。

ふと、カウンターの外側、壁にかけられた鏡に目が行った。

表面がキラリと光った気がする。

興味を惹かれて覗きこむと、鏡は一瞬歪んで記憶にある景色を映し出す。


「え? もしかして見れる?」


最初にここに来たあの日以来、何度覗いても成美の姿は見えなかった。

なのに今、揺れる鏡面は鏡に俺が暮らしていたあの街を映し始めた。

< 67 / 167 >

この作品をシェア

pagetop