降り注ぐのは、君への手紙

「……彼女お幾つですか?」


ヨミがじーさんを見送ってから聞く。


「成美と同じなら十八かな」

「急いでも生まれるのが二十になってからですね。ちと犯罪か。……いやでも何とかなりますかね」

「……あのじーさん、転生コース?」

「そうなればいいですねって話です。決めるのは閻魔様ですからね。僕は後押ししか出来ません」

「閻魔ジジイの心意気に期待ってとこ?」

「タケさんがちゃんと聞き出していてくださいましたから、この手紙の報告で随分後押し出来るんじゃないかと思います。さ、急いで報告書を書かなくては。タケさん、今日は珈琲がいいです」

「へぇへぇ」


勢い良くペンを走らせるヨミの脇に、暇な時に色々試してヨミが一番気に入ったブレンドの珈琲をおく。


「なあ」

「なんです?」

「現世とこっちは時間の流れが違うのか?」


ヨミの動きがピタリと止まる。


「……さっき成美さんも映ってましたもんね。そうですね。あちらのほうが早いです。気がついたら何年も過ぎてることがありますよ」

「俺、ここで呑気にしてる場合なのかな」


ヨミは待てと言ったが地蔵はなかなか来ない。
だったら、万が一の可能性に賭けて帰り道を探したほうが良くないか。

まるで殻を破ったかのように、どんどん綺麗になる成美。
俺が居なくなってから変わる彼女に不安が湧き上がる。

もしかして俺なんていないほうが、成美は自由になれるのか?


「……なんか余計なこと考えているみたいですね」


返事をせずにいると、ヨミがため息をつく。


「待っていてください。コレを急いで届けたら、あなたに会って欲しい方がいます。
結論を出すのは、それからにしましょう」

「え?」

「とにかく行ってきます」


帰ってきたばかりだというのに、書類をまとめたヨミは荷物をまとめて出て行った。

残された俺は、まだ湯気を立てている珈琲を前に、途方にくれた。





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