【完】キミと生きた証
「そろそろ5時電の時間だけど、帰るか?」


「うん、そうしよっか。」


瞬はあたしの鞄をひょいっと持ち上げて、あたしたちは学校を出た。



「うぅー寒いね。」


「・・・だな。凍える。」


「瞬はどうしてコート着ないの?」


「なくてもいけるから。」


「もう・・・。手袋もないの?」


「ねぇよ。」


「手袋もキライなの?」


「・・・・貸して。」



低い声でつぶやくと、あたしの手のひらをぎゅっと握った。



「「・・・・・。」」



おっきい手、どきどきする・・・。



あたしたちは何もしゃべることなく、けやきの駅に着いた。


あと5分くらいで電車がくる。


もうあったかい駅の待合室にいるのに、手はつないだまま。



「ちぃ。テスト終わったらどっか行こうか。」


「いいね。どこ行こうか?」


「ちぃの行きたいとこないか?」


「うーん・・・そうだなぁ。」


あたしが行けるところって限られてるからなぁ。


長時間の電車はいつ倒れるかわからないからダメって言われてるし、かといってこんな田舎町に遊べる場所なんて・・・。



「あ。瞬の家に行きたい・・・。」


「俺んち?いいけど。駅から遠いからなぁ・・・。ちぃ、バイク乗れるか?」


「バイク?乗ったことない。」


「じゃあ自転車の後ろにのっけるか。」


「瞬バイク運転できるの?」


「あぁ、冬以外はバイクで通ってた。今は寒いからやめたけど。」


「そうなんだ・・・。」



だから初雪が降ったあの日まで、あの駅で瞬を見かけなかったんだ・・・。


じゃあ、春が来たらバイク通学になるのかな。


そしたらもう一緒に帰れないなぁ・・。





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