「あた・・しが、瞬に・・・できること、生きること・・くらい。」
「・・ははっ。十分すぎる。」
だれでもできる当たり前のことしか、目標にできなくてごめん・・。
胸にある想いを全部伝えることもできなくて・・ごめん。
あたしは瞬に車いすに座らされて、瞬の手を握ったまま、いすの背に寄りかかった。
「俺・・前に仁奈子にいわれたんだよ。ちとせの希望の光になれって。」
瞬はあたしの目の前にしゃがんで、あたしの目をまっすぐ見つめた。
「・・・・今や、ちとせが俺の希望の光だ。」
瞬はそう言って笑みを見せると、あたしの涙を手で拭った。
・・でもそんなこと言われて、涙がでないわけないじゃん・・。
「瞬は・・あたしの、希望・・だよ。」
「・・・なら、よかった。」
「これ・・飲んでほしい。・・まだ、頑張らないと、瞬が・・困る。」
あたしがシャンパンのコップを手渡すと、瞬は「優等生だな」って言って、飲み干した。
「ちとせがクリスマスも頑張ったから、俺も帰ったら勉強するかな。」
きらきら見えるカラフルな電飾も、
てっぺんに輝くクリスタルの星も、
今度は去年と同じくらい、あったかいものに見えた。
「・・・体力、つけて・・早く退院・・しなきゃ。」
あたしが前向きなことを言うと、
いつだって嬉しそうに笑ってっくれる。
「なら、それまで毎日おしかけてやるから。覚悟しとけ。」
あたしが、”瞬の希望の光”なら、最後まで絶対に諦めない。
「もし・・また、弱気になったら・・・怒ってくれる?」
「・・・怒ってやる。そんでめちゃくちゃに抱きしめてやる。」
クリスマスツリーの下の
幸せなみんなの輪から外れた端っこで
あたしは車いすに座ったまま、
もう一度、瞬に抱きしめられた。